2007年 05月 27日
(写真はクリックすると拡大します。) 名作「月が昇るとき」のグラディス・ミッチェルである。それだけで まず嬉しい。面白さは「月が昇るとき」に比べると正直、落ちるけれど そこらの今様(日本の若手)ミステリを思えば、準宝石の輝きを放つ。 落ちの傑作さに吹出した。そこに持って行くまでの展開が、あまり すっきりしない憾みがある。 相変わらず(と言っても読むのはこれで2冊目だけれど)思春期の少年や 若い娘の気持が、とても的確に描かれ、うつくしい。 牧師の娘が、暑い夏の夜、窓から抜出して森に夜の散歩に行くシーン(p31) <・・・フェリシティは音をたてずに芝生を横切ると、牧師館の庭と墓地を 分けている低い石塀を飛びこえて、ぼおっと浮かびあがる墓石から出入り する、多少やせ気味の魅力的な幽霊よろしく軽やかに走っていった。(中略) フェリシティのまわりは上も下も前もうしろも、夜の芳香とそよぎと 静寂だけだ。彼女はそのすべてを体にとりいれ__ゆっくり深く呼吸した。 いつもと変わらぬ長く曲がりくねった道、地味な生け垣でさえ、言いようの ない喜びを与えてくれる。世界の果てまで旅に出て、不死の花(アスフォデル) の咲き乱れる若者の楽園に行きたくなる。> (グラディス・ミッチェル 河出書房新社 07初帯)
by byogakudo
| 2007-05-27 15:43
| 読書ノート
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 more... ■ねこ新聞
■月刊ねこ新聞Twitter ■蟲文庫 ■kissa e(@higashi-koenji) ■往復書簡 ■旅猫雑貨店 路地裏縁側日記 ■海ねこ的 日々の暮し ■森茉莉街道をゆく ■山崎阿弥 ■サイコ☆ヒステリック 徒然日記 ■穴熊 日記 ■だらだら放談 ■鈴木創士 ■安柊有人(@sosi-suzu)・Instagram ■西谷修―Global Studies Laboratory(GSL) の後継ブログ ■nibuya(@cbfn) ■so_kusumori ■楠森總一郎 EROS VERSUS ■hirose tadashi|photographer ■kizashino ■きざし乃 栞 ■do-do ■スローラーナー ■muttnik ■やっぱりモダニズムが好き! ■かめ設計室 ■建築ノ虫 ■ご近所の日々 ■素人魂~特濃魚汁~ ■素人魂@いたちょ ■胡乱亭 ■梟通信~ホンの戯言 ■左平次(@saheiziinokori) ■花も嵐も踏み越えて鉄道人生44年 ■PAPERWALL ブックデザイナー日下潤一の日々 ■daily-sumus3 ■藤原編集室 ■退屈男と本と街 ■古本屋ツアー・イン・ジャパン ■okatakeの日記 ■ギャラリー ときの忘れもの ■ときの忘れもの@twitter ■銀座レトロギャラリーMUSEE ■痩せたり太ったり ■橋場一男 ■Tracy Talk・・・ ■Unknown Pleasures ■メグブログ 美咲歌芽句 ■亜湖公式サイト ■五月真理矢写真館 ■ヒゴヒロシ ■坂本弘道公式サイト ■三信ビル保存プロジェクト ■逗子なぎさホテル ■わき道にそれて純喫茶2 ■アトリエ プティカ 最新のコメント
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||