2007年 06月 28日
(写真はクリックすると拡大します。) 題材に「ブラック・ダリア」事件が用いられていても、原作は54年刊の ヒラリー・ウォーだから、猟奇の方面には向わない。身元不明の美女の 惨殺死体はあっさりと扱われ、地道な捜査活動がメインの警察小説だった。 寝る前に読むには、頭が上がり過ぎなくて適切だ。 と言っても退屈ではなくて、頭蓋骨から美女の顔を復元することに熱中 する刑事の様子や、後半には、容疑者宅を大勢の警察車両や警官たちが 取り囲むアクション・シーンも描かれている。文体があくまでも落着いて いる、ということである。エンディングのひねりも決まっている。このまま ハリウッド映画に移行できそうな、よくできた展開だった。 解説頁に、物語の舞台としての<郊外住宅地(サバービア)の発見>について 書かれているが、近年の作品であれば、もっとサバービアの憂鬱や影の部分に 描写の重きが置かれそうだ。たしかに、大都市ではないのに共同体意識が 希薄な、郊外の生活から生まれた犯罪とその解決の物語ではあったが。 (ヒラリー・ウォー 創元推理文庫 05初帯) 最近、他に何を読んだっけ? 小林信彦「時代観察者の冒険」(新潮文庫 90初)や、星新一「きまぐれ体験紀行」(講談社文庫 81初)は読了。後者で、 星新一がフィリピンの心霊手術まで受けてみたことを知った。書き過ぎる せいの心身症と見受けられるから、刺激療法的な意義は多少あったようだ。 また、和田誠も一緒だった香港旅行の際、誰も読めなかった「尚保羅貝蒙多」 を和田誠が「ジャン=ポール・ベルモンド」と解読する話等があった。
by byogakudo
| 2007-06-28 13:31
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