2007年 10月 01日
アルフレッド・ベスター、1980年の作品。とても剛胆な作風に、 変わりないベスター像を見る。翻訳はさぞ大変だっただろう。 「ブレードランナー」風のスラム化した大都市、有閑夫人たちが お遊びで悪魔を召喚しようと試みたら、あらあら、潜在意識からイドの 怪物が現実世界に侵入。怪物退治に力を合わせるは、インド系警察高官、 フランス・日本・アイルランド系の科学者、そしてブラック系女性の 精神工学者である。 「虎よ、虎よ!」よりも多いイラストレーション。潜在意識下に下りて イドの怪物を探るシーンは、イラスト+台詞の頁が続く。楽譜形式の イラストもある。 なんでもありの力強さでぐんぐん引っ張る。土曜日は結局、ひと晩で 読み終えてしまった。ひと息に読むのが、やはり正しい読み方だ。 エンディングはまあ、それしかない終り方であるが、タフであることの 清々しさに心打たれる。ひよわな魂と肉体で世界を救済しようってのも 感動的ではあるのでしょうが、あんまり無理しないでと言いたくもなる。 ベスター的に剛胆に馬力をかけて、やくざなSF(ほら話)を書き通す体力・ 気力を、誰にでもどこにでも求める気はないが、この清々しさはよかった。 フェイヴァリット作家でも作品でもないけれど、アメリカ的エンタテイン メントとして、いい作品であり作家だ。 (渡辺佐智江訳 国書刊行会 07初帯)
by byogakudo
| 2007-10-01 15:03
| 読書ノート
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