2007年 11月 08日
昨日ブログを上げた後に、お師匠さんがいらっしゃる。(今週末の 新着欄に載せられる!)文庫本がどっさり、入っている紙袋を下げて。 「その前に、単行本の方を見てみて」 きゃっ、恒川光太郎の新作だ! 「第一作より上手くなってると思うんだけど、読んでごらん」 夕食後、早速読み始める。すばらしい・・・。寝る前に読み終わり、 ベッドの中でも再読してしまった。 標題作「秋の牢獄」がことに好きだ。世界の終わりがひそやかに 着実に語られてゆく。第二作の長編では、ともすれば性急に救済を 求める姿勢が気になったが、ここでは静かな諦観をもって、悲しみを 押さえて語られてゆく。 永遠に繰り返される11月7日・水曜日のサイクルに絡めとられた 人々の物語。と言ってしまっては、「よくあるあれね」で片付けられる。 そんなんじゃない。世界が平べったく単調になってしまった、今の 現実のメタファーであろう。自殺も殺人も翌朝にはリセットされ、 新たな同じ日が待っている世界である。 不死の生命を持たされたしまった人々である彼ら・リプレイヤー あるいはリプレイ面子(メンツ)は、白い影のような何かに攫われ、 ひとり又ひとり、消えてゆく。殺されたかどうかさえわからない、 ただ消去されてゆく。消去された結果、もしかしたらたどり着ける かもしれない11月8日。リアルで象徴的ないまの怪談である。 こんなストーリーの紹介なんて、どうでもいい。怪奇小説好きなら まず読むべし。文章がいい! (恒川光太郎 角川書店 07初帯) ところでお師匠さんが昨日来て下さったのは「秋の牢獄」第一行の ためであろうか。 < これは十一月七日の水曜日の物語だ。> ところで、又ところで。今日「マイラ」が手に入った。むかし五月 真理矢と同室していたころ、 「貸しちゃったら返って来ないの」と言われ、「マイロン」しか 読めずに死ぬのかと諦めていた「マイラ」だ。長生きしてよかった。
by byogakudo
| 2007-11-08 13:35
| 読書ノート
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