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猫額洞の日々

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2008年 01月 21日

山本弘「MM9」読了

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 小説って仲間内に通じれば、それでいいのかしら? この「小説」
ではいきなり、天災のように怪獣に襲われる日本の状況が、記号的に
書かれる。

 怪獣が日本上陸のおそれありということで、気象庁特異生物対策部
(気象庁に属する怪獣警報を出すセクション。実際の怪獣退治は
自衛隊の受け持ち)のあわただしさから始まるのだが、設定自体が
説明不足だから、どんなに登場人物がフルネームで記され、個人情報も
ちらほら書かれていようと、何も伝わって来ない。
 アニメのノヴェライゼーションかと思った第一話である。

 小説世界に読者を引込もうって考えないのかなあ? アニメの
原作になったり、ゲーム愛好家が喜べば、それでいいというスタンスで
書かれたとしか思えない。

 雑誌掲載分に書き下ろしを加えた連作短編集であるが、単行本化する
際、「お約束」了解済み以外の読者が存在するとは考えなかったのか。
 めんどくさくなって斜め読みしたが、怪獣がなぜ存在し、地球の脅威に
なっているかの解説シーンなぞ(第四話)、わりと面白く読めるのだから
長篇に書き直して出版することもできただろうに・・・。
 
 作品は発表された後、読者それぞれに委ねられる。作品がきっちり
表現されていないで、約束事を守る暖かい眼差しの読者ばかり期待して
どうする? 読み手の方も「等身大」の(チェッ、けちくさい!)日常
丸出しの物語に安心したり、小さなオタク世界に安住することしか
望んでいないのなら、何もいうことはありませんが。
 
   (山本弘 東京創元社 07初帯)

by byogakudo | 2008-01-21 12:44 | 読書ノート | Comments(0)


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