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猫額洞の日々

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2008年 04月 10日

スタージョン「輝く断片」読了

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 昨夜寝る前、大急ぎで残りの2篇「ルウェリンの犯罪」と
「輝く断片」を読み終え、全篇読了。だって停電予定日だった。

 明けて今日の1amから3amまで、各階のブレーカを換える
ために停電しますと、予告されていた。1amというのが殺生だ。
たけなわの読書時間帯である。せめて2amからなら翌日を考えて
諦めもつく。3amなら安心して読んでから寝られるのに。

 標題作「輝く断片」のすばらしさに絶句する。本を読んで
泣きそうになるなんて、ほとんど初めての体験である。
 映画なら、あれは感情をもろに刺激するよう作ってあるから
どんな阿呆らしいメロドラマでも泣く。「哀愁」でも「愛情
物語」でも泣きます。自慢することはないが。
 でも本で泣くのは難しい。

 絶望的な狂気の愛が、たたみかけるセンテンスで綴られる。
息苦しくなる。エンディングまで一気に読むしかない傑作だ。
すごい。
 他の短篇はコミカルであったり、悲劇を喜劇として描いたり
している。それらも無駄なセンテンスがひとつとしてない、
緊密な文体であるが、「輝く断片」の集中力の凄まじさは
けた外れだ。

 Sも停電明けに(2amにヴィデオデッキの赤い待機ランプが
点いた。うれしかった。ディックの短篇をひとつ読んで眠った。)
「輝く断片」を読み終える。
 「ハンス・ベルメールかな?」

 選択も配置も翻訳も完璧なすばらしい短篇集だ。貸して下さった
お客さまに感謝。

 (シオドア・スタージョン「輝く断片」 河出書房新社 06年4刷帯)

by byogakudo | 2008-04-10 14:10 | 読書ノート | Comments(0)


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