2008年 06月 08日
昨日はあわてていて、忘れてました。今週の新着欄です、よろしく。 新着欄 売切れ・再入荷の「東京のシルエット」、グラシン紙に「上野文庫」 ラベルが貼ってあったので、このままにしておこう。 ようやく「エヴァ・トラウト」(エリザベス・ボウエン 国書刊行会 08初帯)読了。もっとも、間に小林信彦「昭和の東京 平成の東京」 (ちくま文庫版)も読了。他の文庫本で読んだ記憶がある、映画「流れる」 の地理を考察した箇所はやっぱりすごい。 じっくり正攻法で進む「エヴァ・トラウト」だが、エンディングが 近づくと一気に破滅へまっしぐら、ぶつりと断たれる。見事な収束だ。 コミュニュケーションの不全による暴力の物語かなあ? エヴァは 母語をマスターしないうちに各国を父とともに移り行き、言葉で自分の 感情や思考を表現する技術が足りない。したがって感情も少ない。 彼女の「息子」は聾唖者であり、ふたりの会話は、内面で思いを ぶつけ合う無言のうねりのようなものになる。 大金持ち、すなわち大きな権力を持ちながら、言語能力に欠ける、 というのは意識せずとも暴力的存在であり、周囲は彼女のもたらす 波動を受け変質し、彼女もまたそれを受ける。 娘時代の彼女を導く女教師の名がイズーなのはなぜかと思っていたら、 イズーはイズーでも白い手のイズーだった。 暴力の物語だったか。
by byogakudo
| 2008-06-08 12:53
| 読書ノート
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