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猫額洞の日々

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2008年 06月 22日

グラディーヴァからメグレ警視へ

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 自分で読みたいから手に入れて新着欄に載せたのかと、聞かれれば
そうですと答えるしかないメグレ警視シリーズ(しかし、わたし以外
にもファンは必ずいると信じる)。フロイトの「グラディーヴァ論」を
止めてシムノンになる。梅雨時にはなおさらぴったり。春先のパリにも
雨が降る。そんなシーンからスタート。

 暗い宿命論者のロニョン(第二地区の刑事)は、今回も徒労に終り
そうな地味な聞き込みに励んでいる。
 メグレの属する司法警察本部に入りたくて仕方ないのに、刑事と
しての基礎教育のないこと、あらゆる試験に失敗したこと、そして
彼の性格のせいで、夢は叶わない(p74下段)。
 家に帰れば不具者で寝たきりの奥さんの、呻き声と愚痴。彼は
家事や買物も一手に引受けている(p24上段)。
 ありとあらゆる不運の星のもとに生まれてしまったのか。

 ひがみっぽく受止めやすいから、メグレも口のきき方に気を遣う
のだが、やっぱり否定的にしか受取れない性格のロニョンは、
現実に隣人だったら、とてもつき合いきれないが、メグレ・シリーズの
陰影を深める、なくてはならない登場人物のひとりである。
 報われることを諦め、それでも仕事を投げ出さない(む、古本屋の
鑑とも言えそう)ロニョンに共感しながら__でも、こうなっては
おしまいと自戒しつつ__「メグレと若い女の死」(ジョルジュ・
シムノン HPB 72初 VJ)を読んでいる。

by byogakudo | 2008-06-22 13:17 | 読書ノート | Comments(0)


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