ハートリーは怪奇短篇集で何か1篇、読んでいるが、表題作
「ポドロ島」は、それほどすごいと思わなかった。ウェルメイドだが。
いまは怪談読みの気分じゃないのだろうか。
そう思いながらも続く短篇を読んでいたら、第3篇「足から先に」が
すばらしい!
途中まではよくある古風な怪談の筋立て、古い屋敷に出る幽霊の
物語だ。家に取り憑くのではなく、人に取り憑く若い女の幽霊で、
彼女のからだと接触して、屋内に導いた人に取り憑く。
取り憑かれた人は発病し、死に至る。同じ家の中に、もうひとり
瀕死の病人でもあれば、転移させられるのだが。
たまたま滞在中の婚約者が取り憑かれてしまった娘は、我が身を
引換えにしてでも彼を救いたいと願う。自殺では身代わりにならない。
誰か、何か、方法はないかと狂おしい気持ちで視る、彼女の幻覚
シーンが、唐突なのに不自然ではない。
無茶な展開なのに、この説得力はどこから来るのだろう?
(文藝春秋 08初帯)