2008年 09月 10日
click to enlarge. 三橋一夫は、短篇をひとつ読んだきりで、それは大して面白く なかったから、これも期待せずに読む。 ところが、なかなか後味がよくって、思いがけない拾いもの。 1930年から32年にかけて、慶応大学からヨーロッパに派遣された 日々の、酒中日記風ドタバタが綴られる。 出かける前、銀座裏のなじみの酒場廻りや、大学のスポーツ部 仲間との別れの宴に始まり、シベリア鉄道・ソ連・独逸・スイス・ フランス・イギリス・イタリア、帰りの船を待つナポリまで、 ともかく飲みまくり、酔っては騒ぎまくるエピソードばかり。 むかしの日本の男は、酒癖が悪くても豪傑扱いされ、甘やかされて いたものだが、__みーんな、みんな、マザコンばっかり!__ この本にもそれは感じる。 しかし、自分の甘ったれぶりを自覚している様子があるので、 いやな感じを受けずにすむのだろう。(高木東六自伝とは、そこが 違う。高木東六には自意識が欠けている。) だが、日本のマザコン兼自意識ある男は糞尿譚への傾斜も、同じく 持ってしまうのであろうか。大酒しては、次に手洗いを探してジタバタ する場面が続く。スカトロジック・ヒューマーをあまり解さない古風な 女なので、これ抜きで書けないものか、とも思う。 ただ、昭和26(1951)年刊であるので、あの頃なら糞尿譚は、わりと 好まれていたのだろう。 快男児ものではなく、(裏側にある)青春の悲哀が描かれた作品 として読んだ。 (新小説社 新小説文庫 51初)
by byogakudo
| 2008-09-10 12:50
| 読書ノート
|
Comments(0)
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 more... ■ねこ新聞
■月刊ねこ新聞Twitter ■蟲文庫 ■kissa e(@higashi-koenji) ■往復書簡 ■旅猫雑貨店 路地裏縁側日記 ■海ねこ的 日々の暮し ■森茉莉街道をゆく ■山崎阿弥 ■サイコ☆ヒステリック 徒然日記 ■穴熊 日記 ■だらだら放談 ■鈴木創士 ■安柊有人(@sosi-suzu)・Instagram ■西谷修―Global Studies Laboratory(GSL) の後継ブログ ■nibuya(@cbfn) ■so_kusumori ■楠森總一郎 EROS VERSUS ■hirose tadashi|photographer ■kizashino ■きざし乃 栞 ■do-do ■スローラーナー ■muttnik ■やっぱりモダニズムが好き! ■かめ設計室 ■建築ノ虫 ■ご近所の日々 ■素人魂~特濃魚汁~ ■素人魂@いたちょ ■胡乱亭 ■梟通信~ホンの戯言 ■左平次(@saheiziinokori) ■花も嵐も踏み越えて鉄道人生44年 ■PAPERWALL ブックデザイナー日下潤一の日々 ■daily-sumus3 ■藤原編集室 ■退屈男と本と街 ■古本屋ツアー・イン・ジャパン ■okatakeの日記 ■ギャラリー ときの忘れもの ■ときの忘れもの@twitter ■銀座レトロギャラリーMUSEE ■痩せたり太ったり ■橋場一男 ■Tracy Talk・・・ ■Unknown Pleasures ■メグブログ 美咲歌芽句 ■亜湖公式サイト ■五月真理矢写真館 ■ヒゴヒロシ ■坂本弘道公式サイト ■三信ビル保存プロジェクト ■逗子なぎさホテル ■わき道にそれて純喫茶2 ■アトリエ プティカ 最新のコメント
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||