2008年 11月 24日
click to enlarge. ~11月21日より続く 第二部は、老学者が初恋のひとの孫娘を救う物語。 彼女は負債を抱えて死んだ両親のおかげで、寄宿学校で 使用人兼生徒の立場にいる。恋が実らず独身を通してきた シルヴェストル・ボナールは、彼女を惨めな境遇から救う ことを最晩年の仕事にしようと決心する。 「シルヴェストル・ボナールの罪」という題名が謎であった。 ひっそり暮らす老学者が、どこでどうやって犯罪行為に 加担するのだろうと思っていたら、後見人によって、成人する まで寄宿学校にいることを強制されている彼女を、自分の 住まいへ連れ帰ることが誘拐行為に当たる。 この事件も、第一部の古文書の顛末と同じように、ご都合 主義的決着を見るのだが、気になることはこれではない。 19世紀末頃の小説に出てくる女教師や、女の寄宿学校 経営者に対する扱い方である。 ウィルキー・コリンズ「月長石」や「小公女」のミンチン先生を 思い出すと、彼女たちはいつも悪役ないし馬鹿げた存在として 登場するが、ここでも寄宿学校経営の独身女性は、貧相な 後見人同様、成り上がり志向の俗物として描かれる。 ブルジョアジーの自己保存本能が、自分の階級の下にいる 彼ら・彼女等を馬鹿にすることによって保たれているのかと、 考えたくなる。ブルジョアや貴族階級の俗物性だって、描こうと すれば、いくらでも思いつきそうなものだけれど。 典型というよりパターン化に思える。 (アナトール・フランス 岩波文庫 76再 帯) (1)「シルヴェストル・ボナールの罪」 (2)「シルヴェストル・ボナールの罪」
by byogakudo
| 2008-11-24 14:19
| 読書ノート
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