2008年 12月 19日
click to enlarge. 新制中学と旧制とが、ごっちゃになっているような、と 書いたのは早とちりだったようで、第四章「製図室の夜」 によれば、主人公・泉二は飛び級して友人・丈明と 同級になったそうである(p180)。失礼しました。 ときに腑に落ちない点があっても、時代考証はかなり しっかりしている小説だ。泉二が設計する建築物も、 それぞれ魅力的である。 だけど、なんか、大好きとは言えない。 後半、徐々に泉二が人間というより、神から使わされた 天使的存在であることが明らかになる辺り、あまり 説得力が感じられないのだが。 説得力でいえば、その前の、探偵小説家のために 建てられた「迷宮閣」が、地上にありながらも天界に 移行するための建築である、との描写も不足している と思う。ここが淡白に描かれていては、読者は、納得 できないんじゃないだろうか。 最終章では、泉二は満州の地に赴く。 <新京のずっとさきのほうに町をひとつ>つくりに行く(p312) そうであるが、人間ではなく天使だから、満州国建設に 携わっても責任は問われない、ってことかしら? (それとも、 続編を書く予定で、そこでは堕天使の苦悩が描かれる ことになるのか。) たぶん、「やさしさ」が好きになれない理由であろう。 出来は悪くないのだけれど。 (中村弦 新潮社 08初帯)
by byogakudo
| 2008-12-19 21:27
| 読書ノート
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