2008年 12月 29日
click to enlarge. 斎藤美奈子というと、軽妙かつ辛辣な文体イメージをもって いたが、この本では、かなり素直な感情吐露も見受けられる。 「『ばかけんちく』・・・」と同じ[ニッポンという異国] ジャンルに収められた「日本列島は世界の縮図説から 国内植民地問題を考える」である。 世界の縮図説とは、大本教の日本地図と世界地図は ミクロとマクロの関係にある、という例の説。そこから出発 して「裏日本」を「日本海側」と言替える近年の風潮に抗し、 地域格差をごまかすやり口だと批判する。植民地主義の 現れではないか、と。 斎藤美奈子は新潟市の出身だそうだが、コロニアリズムの 結果発生する、強い地域ナショナリズムに違和感を憶えた 彼女の記憶を記す。 <一九七二年に田中角栄が自民党の総裁選に勝ったとき、 私は高校生で、教師が嬉しそうにそれを報告すると教室中で 歓声があがった。秀才だと思って尊敬していた級友たちが こぞって拍手している姿を見て、ここに永住するのはやめよう と思ったんだから。>(p75-76) そして、この項は < 地方の問題は、中央集権的な生産性優先の時代が 百年続いたことのツケである。「お国柄」ってな楽しい話題と いっしょくたにすべきではない。植民地[注 裏日本]から 宗主国[注 東京]に出稼ぎに来て、そのまま居残った移民 ごときに、とやかくいわれたかないって? そうそう、そういう 発想が大切なんですね。>(p76)と結ばれる。見事だ。 (斎藤美奈子 文春文庫 04年5刷) 「井上ひさし笑劇全集」(講談社文庫)は上巻が、1976年 3月15日初刷、手持ちの本は82年6月11日10刷である。 下巻初刷は76年4月15日、手元にあるのは82年6月11日 8刷だ。 コントとはいえ、脚本集である。その文庫本がこんなに版を 重ねるなんて、目を疑う。井上ひさしブームだったのか、 それとも井上ひさしが座付き作者であった、てんぷくトリオの ブームに乗ったのか。
by byogakudo
| 2008-12-29 13:06
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