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猫額洞の日々

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2009年 02月 04日

(2)ローデンバック「死都ブリュージュ」読了

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~2月3日より続く

 これも70年代に単行本で読んでおくべきだった。毎日何をして
いるかわからないうちに飛び去ってゆく古本屋の日々に読むには、
集中が続かない。

 文庫版でも読むべきではない。ユイスマンス「さかしまに」を
単行本で読まないと、「なんとなくクリスタル」世紀末ヴァージョン
みたように感じるのと同じことで、冥草舎版で、ゆったりと
読むべき本だ。

 ブリュージュはbridgeだから、街の名前自体が生者と死者との
架橋であるし、添えられた写真も、建物と水に写る影とが
生死の両立した風景を成すなぞと、いくらでも言えるけれど、
今読むには感嘆符が多過ぎて、小説世界に入り辛い面がある。

 主人公がブリュージュという街に取り込まれていく箇所は素敵だ。

<[略]無言の類似! 魂と事物との相互浸透! われわれは事物の
なかに入りこみ、事物はわれわれのなかに浸みこんでくる。
 とくに町々には、それぞれ一つの人格、自主独立の精神があり、
喜びや新たな恋や、断念や寂しいやもめ暮しと通じあうような、
ほとんど表(おもて)に現れ出た性格がある。あらゆる都市は一つの
精神状態であって、その都市に滞在するようになると、すぐにこの
精神状態は伝播(でんぱ)し、大気の色合いと溶けあう液体となって、
われわれに感染し、ひろまっていく。>(p113~114)

(岩波文庫 04年8刷帯)


(1)ローデンバック「死都ブリュージュ」
(2)ローデンバック「死都ブリュージュ」

by byogakudo | 2009-02-04 13:35 | 読書ノート | Comments(2)
Commented by Writer at 2009-02-05 12:20 x
 
 こんにちは。昨年の暮れ、一度、トラックバックさせて頂いたことがある者です。

 さて、本日の話題-----『単行本で読んでおくべきだった』『文庫版でも読むべきではない』は、似たようなことを穂高書房のWさんがおっしゃっていたのを聞いたことがあります。
 『山の絵本』や『スウィス日記』の古い版を探しに来た若いお客さんに、
「旧字体で読まないといけないですよ、そういうものは.....」と言って、若いお客さんをキョトンとさせていたのが思い出されます。
 私はWさん同様、旧字体の方を先に読んでいるので、その意見には賛成ですが、新字体を先に読んでしまった人の場合、旧字体の版からどんな感想を得るのか、はなはだ興味があります。
 
Commented by byogakudo at 2009-02-05 18:16
 ご無沙汰しております。先だってはお褒めのお言葉、どうもありがとう
ございました。(「褒め殺しはいやですよォ」と言いながらも、喜んで
いました。)

 新字体で読んでから旧字体本を読む。
 年齢によっても違うと思います。わたしの世代なら、子どものときに
戦前の本が家にあったりして、あまり旧字体に違和感がない、
と思われますが(書けなくても読めますし)、新字体の本だけ
目にしてきた若い方となると、どうでしょう? 
 「これなあに?」って感じでしょうか。 まず紙の古さや立体感のある
活字面にカルチュア・ショックを感じるのでしょうか。

 オブジェとしての本の楽しさやうつくしさは、70年代で終って
しまったような気がします。コスト・パフォーマンスがまず感じられる
本が多くって、いま出ている本の中で、「未来の古本」として残るのは
どれくらいあるかしらと、気がかりです。


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