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昨日帰るさ、未整理の(おお、山成す!)文庫本袋を漁って、山田風太郎
「誰にも出来る殺人」(教養文庫 77初)を取出す。どの短篇も他の文庫で
読んでいる筈だが、物覚えが悪いのは、こんなとき重宝だ。フレッシュな
思いとまでは行かないけれど、前に読んだときより味わって読める。
「臘人」にあふれるアプレゲールの悲しさなぞ、初読ではすっ飛ばして
読んでいた。
「死者の呼び声」は、谷崎潤一郎「途上」だったかしら、蓋然性の犯罪の
応用だから、主人公の元海軍少佐を谷崎と名づけたのだろう等々、さすがに
丁寧に読める。
山田風太郎は明治ものが最高で、次が忍法帖シリーズ、初期の現代
(敗戦直後の)ミステリはあまり面白くないと思って来たが、再読して
みると、そうではない。山田風太郎のニヒリズムは、初期からちっとも
変っていない。