猫額洞の日々

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2017年 12月 31日

吉屋信子『小市民』読了

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 昨日は駒場東大前、河野書店で2冊。森まゆみ『鷗外の坂』
(中公文庫)と、『芥川龍之介全集 8 紀行 日記 詩歌 ほか』
(ちくま文庫)。

 吉屋信子『小市民』の初版は、実業之日本社から1945年に出た版
だろうが、わたしが読んだのは風間完・装幀の東方新書版(1956年)だ。

 吉屋信子は中公文庫でエッセイを2冊くらい、他にはタイトルを忘れたが、
薄くて紙質の悪い本で、恋愛小説を読んだ。快活なフェミニズム・タッチ
だったと思うが。

 『小市民』のエンディングは、寡婦年金を愛国婦人会に寄付するという
書面で終わるから、第二次大戦中に書かれたものだろうか?

 若い男女(靖夫と雪子)が知りあう。どちらも"小市民(プチ・ブルジョアジー)"
階級に属するが、女の方がよりブルジョア(お金持ち)。どちらも父親がいない。
どちらの母親も、そろそろ嫁がせなきゃ、お嫁さんを貰わなきゃと考えている。

 雪子が、大金持ちとのお見合いと知らずに歌舞伎座(『忠臣蔵』の公演)に
行ったら、靖夫も偶然観にきていて、幕間に廊下で逢う。
 ふたりは始めて会話らしい会話をする。

< 「[略]私の母なぞ根からの小市民根性で、ホヽヽヽヽ、成つて居ませんのよ」
 [略]
  「ハヽヽヽヽ、貴女までそんな事を仰しやるのですか、小市民根性というのは
 僕もいつも母に浴せる批評なのですよ」
 [略]
  「[略]今日は僕の会社の慰安会で来て居るのです。[略]僕達は、こんな
 有閑階級的に金と時間を消費させる歌舞伎劇には縁無き衆生です。僕は
 映画で満足する主義です。同じ劇を見るなら新興劇団なんかを__」
  「えゝ私もシネマで満足ですわ。それに新興劇団のお芝居をそれは見たい
 んですの__でも母がたゞ恐ろしがつて、見にゆくのいやがつて、いけない
 と申しますのよ」
 [略]
  「ハヽヽヽヽ、それは御無理もありません。僕の母なぞも僕の学生時代の
 親友がその方に入つて働いて居るのを恐ろしがつて、僕が仲間に加わらない
 と云う事を非常な幸福に感じて居るくらいですから__」
  「どうして、お母さんつて皆小市民的なんでしょう」>
(p71-73『共通心理』)

 大衆小説? 少女小説? 家庭小説? なので、ちょっとした波乱の後に
靖夫と雪子は結婚する。新婚旅行先には、雪子がお見合いした大金持ちも、
新婚旅行でやってくる。そこへ、彼に捨てられた女が押しかけてきて刃傷沙汰
が起きる。メロドラマなのである。

 やや身分違いの結婚をしたふたりだが、雪子は謙虚に靖夫の母に仕えよう
と思う。新婚旅行は京都にも廻る予定だったが、ここで打ち切って、義母と
三人でいつか京都に行こうと提案する。

 東京でふたりを待つ二人の寡婦は、こちらも身分差を越えて親しくなり、
エンディングの愛国婦人会への寡婦年金、共同寄付に至る。

<此度現今の農村不況にて多数の売られゆく娘達を御救済の為に御会の
 御活動有る由を新聞紙上にて承知致し、私共市民として、せめても社会の
 お役に立ちたく[以下略]>(p195『エピローグ』)

 作者も作中人物も読者も、決して"小市民"階級則を越えない、という了解の
確約みたような作品なのだろうか、これは?
 敗戦後、11年経ってまた出版したのは、ストーリーがまだ有効だと思われた
からだろうか?


     (吉屋信子『小市民』 東方新書 1956初 帯)





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by byogakudo | 2017-12-31 19:53 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 12月 30日

小林信彦『私の東京地図』読了

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 小林信彦の東京歩きエッセイは店をやっていた頃、荒木経惟と
ともに歩く『私説東京繁昌記』を読んだ。あとがきによれば、ちくま
文庫では続いて『私説東京放浪記』__ジャケットに見覚えがある
から読んでるだろう(本棚を探せば在りそうだ)__が出た。しかし、
『昭和の東京、平成の東京』となると、タイトルにも覚えがないから
読んでない筈。
 その『昭和の東京、平成の東京』の次が、これ『『私の東京地図』。

 前にも書いたような気がするが、日本橋本町・出身のお客さまが
いらして、
 「小林信彦? あのひとは日本橋じゃなくて両国のひとでしょ」と
仰っていた。

 両国というと、いまのJR両国駅がある辺りしか頭に浮かばず、
いなかものには、日本橋と両国の繋がり方がよく分からなかった
けれど、1971年の町名改訂が混乱の原因だと分かった。

 この本では、『橋だけが残った__日本橋』と『生れた町のこと
__両国』で説明されている。

<<日本橋>とは、西に三越や日本橋があり、東に隅田川が
 あって、両者にはさまれた地域[略]。商人と卸(おろし)問屋
 が混在して[略]、かつてはそこに寄席やら花街(はなまち)が
 あり、川の近くには明治座がある
 [略]
 旧日本橋地区は柳橋・新橋ほかの花街のおかげで栄えていた
 ので、花街が衰えれば、町そのものも淋しくなってゆくのだ。>
(p150-151『橋だけが残った__日本橋』)

 『生れた町のこと__両国』によれば、両国とは、隅田川を
はさんで、武蔵と上総のふたつの国があったから、両国だ。

 江戸城から見て、手前が小林信彦の生まれた両国、川向こうが
東両国になる。JR両国駅がある方が東両国で、いまの地名では
東が外されて、両国になった。回向院のある町だ。

 わたしの頭の中の地図では、南下して浜町や人形町に続くのが、
小林信彦の両国だ。この理解でいいのかな?

 人形町の西部の広がりが小伝馬町や堀込町などの、町名のトップに
日本橋を冠して日本橋小伝馬町とか日本橋堀留町とかになる、日本橋。

< <両国>という町名を<東日本橋>に変えたのは1971年だったが、
 [略]土地の古老たち[略]は絶対反対という叫びをあげるような人たち
 ではないので、<長いものには巻かれろ>式に、あきらめていったよう
 である。日本橋人種の気の弱さだ。
  役人は地名の成り立ちを知らないから、なにをやるかわからない。
 [略]
  中央区の場合はすべて、旧町名の上に<日本橋>と付ける愚かしさで、
 それなら<両国>も<日本橋両国>とすればよいのに、<東日本橋>など
 と、わけのわからぬ町名にする。>
(p168-17『生れた町のこと__両国』)


 『暗いイメージの土地に......__本所』より、相撲に関する箇所を引用。

< ここ[注:回向院]には相撲関係の<力塚(ちからづか)>がある。深川の
 富岡八幡宮で1684年(貞享(じょうきょう)元年)に始まった勧進相撲は、
 巡業によって各寺社にプラスをもたらし1768年(明和5年)に、回向院で
 最初の催しをする。それが明治時代までつづいたのは、両国が浅草と
 ならぶ盛り場だったからだが、1909年(明治42年)には、最初の国技館
 が回向院の東どなりに完成した、
  <国技>という言葉はこのときに初めて用いられたという。適当につけら
 れた名称だったというが、日露戦争のあとということもあろう。
 [略]
  現在の国技館は1984年(昭和59年)に竣成(しゅんせい)し、85年から
 使用されたものだが、あたりにはサイズの大きいシャツや浴衣を売る店、
 ちゃんこ料理屋があり、知らない人は、相撲とは<神事にもとづく国技>
 という俗説を信じてしまう。>(p205-206)

__相撲=国技説とは、テキヤの始まりに神農を持ってくるような自己神話
の世界に等しい。無関係な他者たちまで付き合って、信仰することはない。
明治維新がオリジンでしかない伝統・神話とか、を。


     (小林信彦『私の東京地図』
     Jデザイン・日下潤一 / Jタイトルレタリング・岡澤慶秀 (ヨコカク)
     ちくま文庫 2017初 J)





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by byogakudo | 2017-12-30 21:43 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 12月 29日

歳末恒例、おかず横丁「入舟や」行き・決行

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 1:30pm、ぐだぐだ部屋にいると、このままでは一日、椅子に
坐ってることになるよと、S。
 近場か遠出か、出てみて決めよう。

 昨日よりは冷たくない。鳥越おかず横丁行きを決行しよう、という
ことで地下鉄を乗り継ぎ、新御徒町・下車。

 まず、大村庵で遅い昼食。その後、鳥越方向を目指してうろつく。

 町はすっかり、お正月を待つだけになっている。からんと静かで、
空が青い。
 台東区小島2丁目6番地辺り、株式会社エドワードフジヤの三階建て、
モダーンビルディング。
 小島2丁目7番地辺りの角の三階建ては、かつて壁が銅板葺きだった
のだろうか、緑色のうろこ模様の外壁に改修されている。

 そろそろ鳥越だ。SyuRoの近くに古い建物を活かした雑貨屋さんが
できている。ここは初めて見た。
 入ってみると、旧東ドイツなどの雑貨を扱うお店だった。入口の天井
近くに「ドレミファこども服 すずき商店」という表札が掛かっている。
むかしは子供服のお店だったので、名前を引き継いで、Doremifa雑貨店
になったそうだ。
 開店して半年、金・土・日しか開いていないので、なかなか人知れず
だったと、若い女性店主。
 きれいなフォルムのペーパーナイフ(たぶん)を買う。

 おかず横丁。「入舟や」の前には行列! ふだんは佃煮類が主、年末に
なると単品のおせちを売っている。
 みんな、どっさり買って行く。わたしは、なます以外はふだんの佃煮や
ふりかけを、どっさり。越冬準備だ。
 明日行けば、煮物が出ているそうだ。一日遅らせればよかったかしら。

 佐竹商店街、佐藤精肉店で今日の夕食を買って戻る。もう営業は止めた
けれど、佐竹の「川島ふとん店」の建物が、相変わらず端正でうつくしい。





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by byogakudo | 2017-12-29 20:38 | 雑録 | Comments(0)
2017年 12月 28日

決まらない年末

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 陽が射してるけれど外は寒いだろうなと予想して出てみると、
予想よりもっと寒く、青梅街道は風が吹き抜け、日陰は凍える
思い。部屋が十分過ぎるほど暖かいので、落差に戸惑う。

 古本屋時代は、店は床から寒気が忍び寄り、Sのいた奥の部屋
には、謎の寒風ゾーンがあった。店との境目から奥に吹き抜けて
くる(ライターをつけると焔が揺らぐ)ゾーンで、ちょうど右脚・
ふくらはぎに当って、脚を冷す。
 部屋に戻れば戻ったで、コンクリートの壁に直(じか)に壁紙が
貼ってある壁際は冷たく、エアコンの風が空しく部屋の上層を暖め、
床は冷たい。全体的に、鉄筋冷えというのか、夏は暑く冬は冷たい、
鉄筋コンクリートの集合住宅・生活だった。

 と、かつては、まだ若くて体力があったのだと回顧しつつ、コーヒー
を買いに阿佐ヶ谷へ。寒くて部屋で過ごす時間が長くなると、コーヒー
の消費量が増える。新宿に出る元気がないのでタリーズにした。

 風が冷たすぎる。そのままJRに乗って中野、中野からバスのコースだ。
毎年、おかず横丁に行っていたけれど、今年はメゲそうだ。

 本はテーブルにも、背後にも積み重なっているけれど、これではない
本が読みたくなるような気がして落着かない。なんか決まらない年末。





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by byogakudo | 2017-12-28 21:23 | 雑録 | Comments(0)
2017年 12月 27日

(2)都筑道夫『深夜倶楽部』読了

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~12月26日より続く

 第五話『首つり御門』では、フィクションの枠組み内外の出入り
が楽しめる。

 国文学の助教授が江戸後期の随筆集からの怪談を紹介する。
彼が最初に話したのは、三田村鳶魚『鼠璞(そはく)十種』に
あった話だが、

< 「[略]これからお話しするのは、馬の頭に彼等の等、雑誌の誌
 を書いて、『馬頭等誌(めずらし)』という随筆に出ているもので、
 これは復刻されておりません」>(p162)

という、いかにも在りそうな本を登場させる、始まり方だ。

 神田豊島町(としまちょう)に住む善助という飴細工屋が体験
した話ということで、

<神田の豊島町というのは、現在の千代田区東神田へんで、
 そちらにおいでの都筑道夫さんが、長年、書きつづけていらっ
 しゃる『なめくじ長屋捕物さわぎ』、あのセンセーやマメゾーの
 長屋の隣り町だ。浅草橋御門や、筋違御門(すじかいごもん)が
 近い。善助が住んでいるのは、柳原土手(やなぎわらどて)を背
 にした貧乏長屋だった。>(p162-163)

 たしかにあった筈の首つり死体が消える話が終ると、助教授と"私"
こと都筑道夫(これまた、フィクション上での都筑道夫という作家だ)
が、怪談論を交わす。

 助教授が、

< 「[略]ぼくがこうした随筆にひかれるのは、怪談としての近代性です。
 江戸後期の創作怪談は、小説でも、歌舞伎(かぶき)の脚本でも、講談
 でも、[略]因縁因果で、幽霊が現れて、古めかしさをまぬがれない。[略]
 これは長篇(ちょうへん)というスタイルから、やむをえざるところ、
 ともいえるでしょう」
 [略]
  「都筑さんは、明治以後の創作怪談では、岡本綺堂と内田百閒の作品を
 最高とされています。ぼくは泉鏡花も、くわえたいような気がしますが[略]」 
 [略]
  「ロマンティックな美しい短篇小説としては、高く評価します。[略]
 ぼくの尊敬する大作家が、『鏡花はいなかものだから、生きているうちから、
 幽霊のように、美しい芸者しか書けないが、綺堂の書く芸者や、遊芸師匠は、
 ちゃんと血がかよっている』という意味の批評をしている。[略]ぼくのいう
 近代怪談は、幻想小説とはちがうんです」
  「そうでしょうね。綺堂も百閒も、短篇作家です。近代怪談というのは、
 短篇小説だと思うんです。長くなればなるほど、ロマンティックな幻想物語
 か、血みどろのグラン・ギニョールにならざるをえない」
 [略]
  「江戸の随筆に見える怪談は、みんな、いわば短篇です。それだけに、
 びっくりするほど、モダーンな話がある。[略]」>(p181-182)

 そしてまた、『馬頭等誌(めずらし)』からの紹介という触れ込みで、もう
ひとつの消えた首つり死体の話をした後、怪談論議で終わる。


     (都筑道夫『深夜倶楽部』 徳間文庫 1992初 J)


(1)都筑道夫『深夜倶楽部』
(2)都筑道夫『深夜倶楽部』





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by byogakudo | 2017-12-27 20:37 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 12月 26日

(1)都筑道夫『深夜倶楽部』半分弱

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 写真は、歩いて高円寺に行くときだったか、わりと近場で
逢った猫たち。下のクロトラさんはどっしり落着いていたが、
上のクロさんは即座の逃げ腰。親子かもしれない。


 都筑道夫は全部読んでるんじゃないのと、Sが聞くけれど、
いや、これはたしか読んでないと思うので買って読み出した。
 3篇読んだ結果、やはり読んでいないと思う。記憶力が衰滅
しているので、読んだ後まるきり忘れている可能性はあるが。

 作家、都筑道夫・本人が怪談会で聞いた話を記述するという、
枠組みを設定して書かれた怪談集だ。

 第一話『死びと花』でも、

< ひょっとしたら、材料になるような話があって、岡本綺堂
 (おかもときどう)の『青蛙堂鬼談(せいあどうきだん)』みたいな
 シリーズが、書けないとも限らないだろう。カセット・レコーダー
 に、カセット・テープもたっぷり用意して、私は参加した。>(p7)

と、物語の枠組みをきっちり見せるやり方で始まる。

 その後、ある老俳優の話が紹介される。ディテイルを変えた方が
小説にするには効果的ではないかと、作者の思考が述べられ、

< こんなふうにしたら、怪談らしさが、ますのではないか。
 しかし、怪談らしくすることが、話を怖くするとは、かぎらない、
 と思いなおした。
 [略]
  やはり、これは老優が話したまま、紹介するべきらしい。[略]
 その夜の『深夜倶楽部』の話に、おもしろいものは他にもあった。
 江戸時代の話もあれば、現代の話もある。明治の東京の話もあれば、
 十年前のニューヨークの話もあった。>(p45-46)

 都筑道夫の小説の特徴のひとつが、短篇であっても情報量が
たっぷり__読んだあと、様々な知識が増える__ということだ。

 第三話『姫はじめ』は、ある老人の語る、彼の祖父の日記ないし
随筆からの話である。幕末の絵師が主人公で、大金持ちの席画を
引き受けると、前払いの謝礼金が三両、

<旗本屋敷の若党中間(ちゅうげん)の給料が、一年三両の時代です。>
(p89)

と、早速、知識が得られる。


     (都筑道夫『深夜倶楽部』 徳間文庫 1992初 J)

12月27日に続く~





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by byogakudo | 2017-12-26 21:38 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 12月 25日

大庭萱朗 編『色川武大・阿佐田哲也エッセイズ3 交遊』読了

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 『I 遊ぶ』『II 漂う』『III 読む』『IV 食べる』の四種類
に分けられているが、『II 漂う』のトップに出てくる『地中海の
タキシード』(色川武大・名で書かれた『ぼうふら漂流記』所収)
がすばらしい!と、Sとふたりして思う。

 (余計なことだけれど、色川武大・名が*印、阿佐田哲也・名が
※印と分類されているが、老眼には判別しにくい。若いときには
一目で区別できただろうに。)

 『エッセイズ』とジャンル分けされているが、"エッセイ"が、
身の回りのできごとの観察やそこに発する思いを述べる文章だと
したら、『地中海のタキシード』は"エッセイ"のスタイルで書かれた
小説、と呼ぶべきではないか。

 作家である"私"が主人公だから"私小説"かというと、断じて、そうは
ならない。主人公は作家個人であると同時に、近代の日本の肖像ではと、
感じられてくる。パースペクティヴの広さや深さが、身の回りのことに
収まらなくなる。

 必要もないのにタキシードを誂える。それを着る必要がある場としては、
必然的に西洋のカジノだろう、ということで、妻と別れようとしても別れ
きらない主人公(の作家)は、写真家の女友だちと南仏に逃避する。

 賭博場なら彼のフィールドのはずだが、ヨーロッパのカジノはそうならない。
みんな平服の中に、ひとり、礼服着用であっても、東洋人である作家は度々、
席に着くことを拒否される。日本は西洋の仲間ではなかったし、今でも仲間
ではないことの一例のように。
 拒否される場面の直前に、同行の女友だち(ロンドンで暮らしていた)が、
カジノの客の出生民族を説明してくれるカットが入った上での、拒絶シーン
である。

< ああ、ヨーロッパに来てるんだな、と実感した。そうして自分が、ばくち場
 でもやはり言葉のできない犬ころにすぎないことをさとった。>(p215)

 出発前に大金をはたいて、やけくそのように買った靴が合わなくて__妻の
呪いかと、主人公は考える__、びっこを曳きながらカジノ巡りを続けていると
ナルコレプシーの発作に襲われ、顛倒して、まだ代金を払っていないタキシード
が裂けてしまう。

 『地中海のタキシード』の最後は、大晦日の夜だ。他に行くところがないので、
やはりカジノに行く。

< どこからこんなに集まったかと思うほどの紳士淑女たちが、いっせいに
 タキシードや夜会服に飾って集まっており、ラフな格好でびっこを曳きながら
 入ってきた私の方に、奇異な視線を浴びせてきた。>(p223)と、終わる。

 どんな時空にも居場所が見いだせない、あるアプレゲールの生涯を切りとった
ような瞬間だ。
 

     (大庭萱朗 編『色川武大・阿佐田哲也エッセイズ3 交遊』
     ちくま文庫 2003初 帯 J)





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by byogakudo | 2017-12-25 20:58 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 12月 24日

中野往復(2017/12/24)

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 写真は12月19日の神田富山町29辺り。陰になっているけれど、
看板に"日本輸入資材"の文字が見える。

 陽が射してきたし、今日も歩かなくちゃ。寒くても陽が出て
いると猫にも逢う。
 遠回りしながらJR中野駅・北口へ。

 古本案内処の店頭で、吉屋信子『小市民』(東方新書)と
梶山季之『昭和元禄女大学』(集英社コンパクトブックス)。
 店内で、都筑道夫『深夜倶楽部』(徳間文庫)とロイド・ビッグル
Jr.『暗黒の監視人』(サンリオSF文庫)。

 帰りはバス。部屋に着いたら、注文していた『色川武大・阿佐田
哲也エッセイズ2 芸能』(ちくま文庫)が届いていた。
 年末年始の準備は、これで充分だろうか?

[同日追記:
 梶山季之は『昭和元禄女大学 青い渦の章』というのを買った。
続編の『紅い焔の章』も探すのかな?]





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by byogakudo | 2017-12-24 17:11 | 雑録 | Comments(0)
2017年 12月 23日

(4)グウェン・ラヴェラ/山内玲子 訳『ダーウィン家の人々 ケンブリッジの思い出』読了

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~12月21日より続く

 ヴィクトリア朝の上流階級の少女、グウェンには、
<幼い時から仕込まれた仕事が一つあった。若い男女の交際の
付き添い役をつとめることだった>
(p120『第六章 紳士淑女のつつしみ』)。

 "男女七歳にして"のヴィクトリア朝ヴァージョンでは、
<仲のよい男女が二人だけでどこかへ行くことは、[略]
 その二人がどんなに分別のある年齢でも、どんなにきちんと
 した人であっても>(p123)付き添い役なしにできない。

<フランク叔父[略]がエレン叔母[略]と婚約した時、叔父は
 35歳、叔母は27歳でニューナム・コレッジのフェロー兼講師で
 あった。これ以上きちんとしたカップルにはお目にかかれない、
 というほどの人たちであった。>

 そんな二人であっても、ニューナムの学寮長、ミス・クラフ抜きで
二人きりで会うことはできない。

<応接間で二人が話している間、ミス・クラフ自身もいっしょに
 すわっていた。[略]
 もちろん、叔父がエレンの居間にいくことはあり得なかったし、
 エレンがフランクに会いにいくことなど、明らかに論外だった。
 みんな一体、どうやって婚約にこぎつけたのだろう。>(p124)

< 当時は規準と現実(建て前と本音)のギャップ__いつの時代
 にもなんらかのギャップはあるのだが__が異常に広がっていて、
 建て前が特に偽りのものだった、これが実情である。1850年から
 1914年にかけての、まともな[注:中産階級以上の]人々の物の
 考え方がいかに非現実的であったかを知るには、ヴィクトリア朝
 中期から後期の小説に書かれなかったものを考えてみればよい。
 彼らが意図して偽善的な立場をとっていたわけではないとは、容易
 には信じ難い。事実を直視しようという気がなかったのだから。
 しかし、意図的に避けようとした人は少なかった。たいていの人は、
 無思慮で未熟な人にありがちなように、ただ時代の風潮に流されて
 いただけなのだ。なにしろ70年近くにわたって、イギリスの中産
 階級は、非現実と見せかけの堅固な要塞の中に閉じこめられていた。
 そしてその要塞の内側で育った人間でなければ、その壁がどんなに
 厚かったか、狭間(はざま)から見える外の空がどんなに限られていたか、
 想像もつかないのだ。>(p128)

 時と場所を多少違えれば、レオノーラ・キャリントンの回想とも、
ヨーコ・オノの回想ででもありそうな、グウェン・ラヴェラ回想記だ。
 但し、明治女がタフな神経を持つように、やはりヴィクトリア朝に
育ったひとはタフ(で、ときにラフ)だなあと感じる。いまは、率直に
述べたいと思っても、いろいろ気を配ることなく回想記を書くなんて
可能なのだろうか。


     (グウェン・ラヴェラ/山内玲子 訳『ダーウィン家の人々
     ケンブリッジの思い出』 岩波現代文庫 2012初 帯 J)

(1)グウェン・ラヴェラ/山内玲子 訳『ダーウィン家の人々 ケンブリッジの思い出』
(2)グウェン・ラヴェラ/山内玲子 訳『ダーウィン家の人々 ケンブリッジの思い出』
(3)グウェン・ラヴェラ/山内玲子 訳『ダーウィン家の人々 ケンブリッジの思い出』
(4)グウェン・ラヴェラ/山内玲子 訳『ダーウィン家の人々 ケンブリッジの思い出』


 今日は方南町B・Oで、108円の三島由紀夫『小説家の休暇』
(新潮文庫)、約半額の小林信彦『私の東京地図』(ちくま文庫)、
6掛けのフィリップ・K・ディック『銀河の壺なおし[新訳版]』
(ハヤカワ文庫)、定価の15%の鬼海弘雄『世間のひと』(ちくま
文庫)。





呪 亜屁沈臓/呪 汚池腐裏子/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐・夷蛮禍/

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by byogakudo | 2017-12-23 21:07 | 読書ノート | Comments(0)
2017年 12月 22日

ジャン=クロード・カリエール/ピエール・エテックス 絵/小柳帝 訳『ぼくの伯父さんの休暇』読了

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 地下鉄内で読んでいた『ぼくの伯父さんの休暇』を読み終わる。
夏のヴァカンスの話を冬場に読むのかと思うが、ピエール・エテッ
クスの挿絵が楽しいし、本の厚さが適度だったので。
 近ごろの文庫本は、文字を大きくする分、どうしても厚くて重い。
寝床では何とか読むが、持ち歩くのは、ためらう。せっかく、バッグ
を布製にして、軽くしたのに。

 パリに住む中年夫婦は毎年、夏になると同じ海辺のホテルで休暇を
過ごす。夫が語る、ある夏の休暇の物語である。
 まだ学生だったジャン=クロード・カリエールによる、ジャック・タチ
の映画作品をノヴェライズしたもの。

 夏はどこかへ行かなければならないというので、ヴァカンスは、まるで
仕事みたいになる。往復の交通機関はラッシュだし、着いたら着いたで
無為を行為しなければならない。
 オンもオフも欲望とは関係しない。オンの次に来るオフは、工場の流れ
作業に従事するみたいに自動的に、いや、他人の行動を真似て、自分の
欲望の発現みたように振舞うことになる。

 語り手はいつも妻の後に着いて、海岸を散歩する。どこへ行きたいとは
自分では思わない、妻が歩く後ろに従うことを自分の散歩にする。
 妻との関係や習慣を変えたいと思わない。何かを変更するには、自分は
もう"じいさん"だと思っている。

 傍観者、観察者である語り手の目の前に、ある夏、ユロ氏が現れる。
ユロ氏は公共交通機関ではなく、語り手が列車とバスの中から見かけた、
今にも分解しそうなオンボロ自動車でホテルに着く。トリックスターの
登場だ。

 悪意はこれっぽっちもないのに、やることが悉くドジなので、夏の海岸や
ホテルの人々の間に迷惑と大騒動を巻き起こす自主独立のひと・ユロ氏は、
ついに、語り手の裡に何か、普段とちがうことをやってみたいという欲望を
立ち上がらせる。
 ユロ氏に学んで秘かに冒険を試みる語り手の行動の、ささやかで一瞬の
サスペンス。

 穏やかに綴られる、ある夏の3週間の日記形式なので、本文は、この要約
みたいな硬さの真反対だ。もし要約に教訓臭が感じられるとしたら、わたし
が悪い。
 エテックスの挿絵と呼応する、軽々としたのどけさに溢れる、しみじみと
しない枯淡が味わえる。

 翻訳者・小柳帝が"訳者あとがき"に書くように、
<中公文庫に加えていただくことになり、[略]
 『ぼくの伯父さんの休暇』は、レーモン・クノーの『地下鉄のザジ』や、
 カレル・チャペックの『園芸家12ヶ月』の横にこそ並ぶべき本だと
 思っていただけに、まさに感無量である。>(P242)
__まったく、その通り。
 さらに、巻末には、ジャック・タチ作品の輸入に関わり、『ぼくの伯父
さん』の翻訳者でもある秦早穂子の解説『ジャック・タチ 笑いのポエム』
がある!
 

     (ジャン=クロード・カリエール/ピエール・エテックス 絵/小柳帝 訳
     『ぼくの伯父さんの休暇』 中公文庫 2008初 J)





呪 亜屁沈臓/呪 汚池腐裏子/呪 共謀罪=ネオ治安維持法/呪 吐爛腐・夷蛮禍/

 安保関連法(こと戦争法)の本会議投票行動(PDF)東京都の
安保関連法(戦争法)に賛成した議員名


 共謀罪強行成立記念! 安倍政権の暴挙を忘れないために振り返る
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 「共謀罪」法 衆参両院議員の投票行動

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by byogakudo | 2017-12-22 20:53 | 読書ノート | Comments(0)